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  あとむたいむす
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★2003.11.7更新
10月某日、「演劇タイムズ〜ニッポンの演劇はどう変わる?〜(10.27号)」の取材を受けました。
公演終了後、劇団員みんなでインタビューを受けました。

 〓〓〓〓〓〓〓〓 見たい!知りたい!演劇業界!〓〓〓〓〓〓〓〓
大人が感動する演劇を!〜劇団あとむ〜
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日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には
知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、
アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、
演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、
演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第12回目の今回は、劇団「あとむ」です。

●劇団あとむ

1984年、「共に生き合う時代を一歩進めて、今は敵と共に生き合う時代を」という考えの下、
演出家・関矢幸雄氏を創造リーダーに迎えて発足した劇団。全国の小学校の演劇鑑賞教室や、
おやこ劇場・こども劇場を中心に活動をしている。
舞台劇から人形劇、マスクプレイなど、表現ジャンルにとらわれることなく、トルストイ、
アンデルセン、C.W.ニコルなどの作品を通じて、人と共に生きることの大切さ、希望を持つことの
素晴らしさを表現し続けている。

演劇の「生きた、生(なま)の表現」にこだわり、劇中の音楽や歌は、すべてマイクを使わない生演奏、
生歌(なまうた)のみで構成。。

アニメーションとパントマイムを融合させた「アニメイム」(関矢氏造語)や、手話を取り入れた表現は、
言葉が通じなくても、声が聞こえなくても楽しむことのできる方法として、
劇団「あとむ」の最大の持ち味となっている。


●演劇鑑賞教室にお邪魔しました

10月8日に、東京都豊島区の小学校の演劇鑑賞教室で行われた、劇団あとむの
「あとむの時間はアンデルセン」を拝見させていただき、劇団員の皆さんに取材をさせていただきました。

この作品は、あとむが得意とする「アニメイム」がふんだんに盛り込まれた作品です。
「アニメイム」とは、身近にある棒やボールを使って、空間にいろいろな動物や風景を作り出して
ゆくもので、演出の関矢さんが作り出した、遊び心いっぱいの表現方法です。

また、台詞は全て同時手話でも表現されており、時にはパントマイムのようでもあり、時には
ダンスのようでもあり、私はもちろんのこと、子どもたちもグッと引き込まれているのがよく分かりました。

今回は、舞台を鑑賞した後、役者の皆さんと、劇団代表の秋山京子さんにお話を伺いました。


Q・全てアカペラコーラスで、手話もあって、アニメイムもあって…。本当に沢山の技術が盛り込まれて
  いますが、稽古は1日にどれくらいやっているのですか?



――― 普段の稽古は不定期になります。        
     もちろん、新作を作る時は何ヶ月も時間が掛かりますが、
     本番がスタートすると稽古をしている時間がないんです。
     学校公演やツアーが始まると常に本番ですから、
     当日のリハーサルやミーティングになります。
     アカペラコーラスのハモリにしろ、手話にしろ、
     できるようになるまでは何千回も練習しましたよ。
     実は、かなり難しい手法なんです。
      特に、手話は先生についてもらって、
     本当にちゃんと通じるようになるまで練習しました。
     いろいろな土地で、一人でも多くの
     子どもたちに伝えたいので、必死です!(笑)



Q・全国の小学校を回っていらっしゃいますが、どういう営業方法をとっているのですか?

 ―――うちは、制作は勿論、役者もあちこちに足を伸ばして、実際にお会いしたり、
     下見していただいたりして、そして公演の機会をいただいています。
     人と人とが向き合うお芝居ですもの。それをご紹介し、理解していただき、
     好きになっていただくには、こちらからきちんと足を運びませんと。
     パンフレットだけ送ってもだめですね。

     今回の公演も、先生が「あとむ」を観てファンになってくれて、
     是非子どもたちに観せたいといって呼んで下さったんです。
     先生方がお芝居を理解してくれて、そして、子どもたちに
     お芝居を観ることの素晴らしさを伝えようと努力してくださる。
     だからこそ、私たちも、営業にしろ作品作りにしろ努力しなくては!

常に人に合い、人と向き合い、人と共に生きてゆこうという姿勢は、                  
実際に観た舞台からも十分に感じられるものでした。                          
そんな劇団「あとむ」さんに、今の小学校の現状や、学校演劇についてお伺いしました。      


  Q・最近、子どものコミュニケーションの問題や心の問題がよく議論されますが、
    沢山の学校を回っていて、昔と違うところはありますか?

―――いろいろなことを言われてますけど、
     小学生は(こどもは)本質的には変わってないと感じます。
     小学生はまだ間に合うぞと。だからこそ、
     演劇をもっと見せてゆかないといけないんですよ。

     演劇は、「生きる」ということ、
     人と「生き合う」ということを教えてくれる、もっともいい教材なんです。
     楽しみながら、遊びながら、人と人とが接して、助け合って、
     共に「生き合う」ということを伝えてゆける、最高の表現なんです。
     演劇鑑賞教室が、授業時間の問題で廃止される学校も多くなっていますけど、
     それがどれだけ子どもにとって悲しいことか。
     の扉を開いた時に「0(ゼロ)」の大人にならないように、小さなころから
     演劇に触れて、人と「生き合う」ことを知って、心豊かな大人になってほしい。
     その為には、お芝居の力を理解してくれる大人が
     もっと増えてくれるといいな、と思います。
     結局、お芝居を子どもたちに見せる機会を作れるのは大人なんですから。

 

Q・いろいろなところで公演をされていて、
  「もっとこうすれば演劇が広まるのに」と思うことはありますか?


 ―――やはり、もっと先生を含めた大人の方々にお芝居をご理解いただきたいですね。
     もちろん、昔に比べては良くなっていると思いますよ。でも、「本当に大人が変わらなくちゃ」と、
     いつも思います。

     「生き合う」って何度も言いますが、つまり他を認め合う、共存ですか。
     今、一触即発の争いの時代でしょう。それを変えてゆくのは、次の世代。
     今の子どもたちがよりよい時代をつくってゆかなければならない。

     演劇そのものが大勢が力を合わせ、他を認めて創るものですし、その表現で伝える、物語、
     テーマは子どもの感性を育てる。「生きる練習」(大江健三郎氏の言葉)には、
     演劇は最高の手段です。それを大人たちや教育者にもっと意識して欲しいです。
     学校の先生にはお芝居の事を良くご存知ない方も多いのかもしれない。
     でも、そういう人にこそ、私達のお芝居を観てほしいと思います。

     大人がお芝居を「面白い!素晴らしい!」
     と分かってくれれば、子どもに観てもらえる機会も増えるし、
     会場全体で楽しむ空気が創り出せますから。
     だからこそ、大人にもっとお芝居を理解してもらいたい、
     もっとお芝居を観てもらいたいと思いますね。
     また、創造団体にも問題はあるかもしれません。
     本当に子どもに喜ばれるものは、大人にとっても面白いものでなければいけません。
     大人も「これは素晴らしい!」と言われるような作品を創るための努力と、
     演劇のよさを知っていただくための努力を惜しんではいけませんよね。


劇団あとむは、小学校へ出向き、アニメイムを使った遊びや、表現の面白さを伝える活動もしています。
それも、子どもにとって、お芝居やパントマイムなどの舞台芸術の与える効果を
理解していらっしゃる先生との出会いがあったからできたのだそうです。

お芝居をしていることに対して、「いつまで遊んでいるんだ」という白い目で見る大人や、
演劇を志す若者に対して反対をする大人は、まだまだ多いのが現状です。そして、そういう大人に限って、
実はお芝居をほとんど知らないというのも事実でしょう。

一口に「お芝居」といっても、大人が観るものから、若者層に人気のあるもの、児童を専門にするものと、
いろいろなジャンルがあります。しかし、どれもが心を満たすための芸術であり、
「人の心を満たす」ということは、社会へ貢献できる立派な仕事です。

子どもが心豊かに育つためには、まず、大人に「お芝居」というものを理解してもらい、
大人の心を豊かにしてゆかなければいけないのかもしれません。そして、大人を魅了する素晴らしい
舞台を創り続けることが、創造団体の義務なのでしょう。

(構成・文/O)