雑誌「演劇と教育」98年5月号より
演出の面白さ、俳優の技 須賀正子(東京都・江戸川区立大杉第二小学校)
久しぶりに、肩が凝らず楽しく観られて満足感の残る作品に出会った。
関矢幸雄さんの演出作品だということなので、布をどう使っているのかなと
楽しみにしていたが、小屋になり、クジラになり、大海原になり、海の底の魚や
たこも布で表現していておもしろかった。
全編を通じて手話入りで演技しているのに驚かされた。
誰か一人が手話通訳をするのではなく、舞台に立つ役者さん全員が手話入りで
話し歌っていた。初めは、手の動きが気になったが、話がテンポよく進むうち、
だんだん自然に見えて気にならなくなった。それにしても、よく手話をつけて
全員が演技できたなぁと感心してしまう。出演者は全員が楽器を演奏できて、
すべて生演奏でとてもいい。民族楽器のバラライカでの弾き語りもなかなか
味わいがあってよかった。
気のいいイワンが兄たちに言うせりふ
「ぼくはりこうじゃないけどひとのものはぬすまないよ」が心に残った。
ボーッとしていて、たよりなくても「悪いことは悪い」とはっきり言った。
子どもたちにも伝わっただろうな。イワン役の役者さんは若いのに力がぬけていて、
ホントに人が良さそうな雰囲気があり好感が持てた。演技力があるのか、
ハマリ役なのか、よかった。
小馬役の役者さんの演技が、特に光っていた。舞台を元気いっぱい走り回り、
イワンの危機を救い、共に冒険に出る小馬。考え込んだり話したり歩いたりする
しぐさの一つ一つが知恵と愛嬌を感じさせてくれ、観ている私たちに元気を与えてくれる。
イワンが不思議な小馬と友達になり一緒に冒険に出かけ、火の鳥を捕まえたり、
海の王女を連れてきたり、クジラを助け指輪を探してもらったりするが、ワクワクしながら
観ていた。火の鳥が生きているようで、飛んでいるようで楽しかった。
小馬の背中にイワンが乗って走る場面を、イワンの背に小馬が乗り、小馬の背に
イワンの人形を乗せ想像力で観て下さいといっていたが、小馬の背にイワンが
またがったているように見え、おもしろい。
小馬たちのお母さんの白馬の衣裳や踊る姿がハッとするほど美しかった。
海の王女があまり美人でなくて、やんちゃな王女さまであるところがまたいい。
欲張り皇帝ツァーリの求婚を断る、その理由が、人間性についてではなく、
「外見でおじいさんだからイヤ」という海の王女は、ちょっとどうかなと思った。
「イワンのばか」や「せむしの小馬」という題ではなく、
『気のいいイワンと不思議な小馬』という題にしたところも、
わかりやすく気持ちのよい題名で良いと思う。
「あーおもしろかった」観おわって、隣の小学生が言っていたが、同感である。
この公演は
文化庁・日本芸術文化振興会 舞台芸術振興事業
児童青少年演劇優秀舞台公演
(主催:社団法人 日本児童演劇協会)
です。
(チラシより)
毎年、児童青少年対象の作品が数多く創出されながら、
優秀な舞台がその作品群の中に埋もれがちなのが現状です。
当協会では特別に優秀な舞台を選定し、公演を行うことにより、
児童青少年演劇への評価の向上、劇団相互に刺激を与えることによる
創造の質の向上、児童青少年演劇の更なる普及と劇団の健全育成を図る
ことを目的として、児童青少年演劇優秀舞台公演を企画しました。
幸にも、文化庁・日本芸術文化振興会より舞台芸術振興事業として助成を
いただき、公演を行うこととなりました。
日時:98年2月1日(日)
会場:江東区児童会館ホール