風の便り 第2号より 抜粋


2000年7月30日、快晴。7ヶ月練り上げた作品の初日!

東京都児童会館ホールの搬入口に8時45分集合。
普段なら小屋に入ってから集合して挨拶だが、それも惜しんで炎天下で挨拶と打ち合わせ。
公演班10人と応援の照明などスタッフ7名の計17名。
将来的には、この17人でする仕事を10人で覚えてやっていかなければならない。
10人の俳優がする芝居なら7人のスタッフがいてもおかしくない筈。
児童演劇は過酷な仕事だなあという思いと、観客組織を含めた環境整備を
しないという思いが交差する。

10時、演出の関矢氏到着。早い!早速、舞台の飾りを見てダメの連発!
続いて、美術の有賀氏、音楽のクニさん到着。緊張は高まってくる。
12時、点検の稽古開始。
13時30分、開場。学校の先生、公文協の方、子ども・おやこ劇場の方と子ども達、
やはり大人が多めか。約四百五十人で1階の約90%の入り。
顔見知りの人が多く応対にてんてこ舞い。

14時、ロシア民謡の「白樺」の歌で開幕。
トルストイの世界が展開していく。

15時20分終演。会場を出ていく人の表情を読みとるのが、
この芝居の評価を読みとる事なのだ。感想を述べてくれる人と応対しながら、
横目でお帰りになる人を観察する。
初めてお目にかかる北御門氏の訳したトルストイを出版し続けるT書房のI氏が
声をかけて下さる。氏はこの日だけの公演と思ってたが、これから日本中で公演をする
という事を知って「今こそトルストイを子ども達に」と喜んでくださる。

そして、人も途切れかけた入り口で何か言いたげに佇む若いお母さんと2才くらいの坊や。
「あのー、この子が天使に会いたいってきかないんです」

楽屋に向かう若い親子の後ろ姿を見ながら明治以降の日本の文学を始め多くの人たちに
影響を与えたトルストイが今蘇ったと確信する。


『あとむのお話コンサート』初日のアンケートから

無事に初日を終えて手元に75通のアンケートを戴いた。

観客がほぼ450名位だから多いほうか。初日という性質上、
どうしても学校の演劇担当の先生や子ども・おやこ劇場、そして公文協の人が中心となる。
子どもと大人の割合は六対四で大人の方が多め。
好意的なものが勿論多かったが大人のは下見に来た責任感のようなものが感じられ、
細部にこだわる方もいる。それに比べると子どものは素直で楽しい。
「二歳の子には難しかった」という大人のアンケートも有った。
が「天使に会いたい」と楽屋を訪ねてくれた二歳くらいの坊やがいたのが面白い。

劇団として二つの点が知りたかった。
一つは「三びきのくま」がどう受け取られるか。
これを採り上げたのは幼児が面白がり、大人は「勝手な女の子」と怒る違いは何だろうか
という事(私も後者だった)。結果はその通り。「本で読んで貰ったときより面白かった」
という幼児あり、「ホントにトルストイなの?」と言って帰る親しい知人の大人有り。
我々も稽古中を通して考え続けた事だが、解説書に言う(大中小、1.2.3)という
リズムの面白さという通り一遍なものではなくだけではなく小さな詩として表現している。
また演出の関矢氏に示唆された事だが「これは住み分けを教えてくれている」事なのだろう。
今、世界で民族問題を含めて「住み分け」の必要さがどれだけ大切か。
ただ、それを科白で言う必要は無いが・・・。

第二に「人は何で生きるか」が宗教的と言われるかという点である。
宗教アレルギーであり、大いなるもの(それは大自然でも良いし、人間の及ばざる力でも良い)
への敬虔な懼れを忘れた日本人にはゴツンと来るかと思ったが(宗教色は嫌)というのは
わずか2通のみだった。
とにかく、ここを出発点としてスタートを切った。
手直しをしながら10月の公演活動開始まで磨きを掛けていこう。 (文責・秋山)